2007/08/10

[300]   たわしの仔

at 05:40JST
夏。未明のぼんやりした道を、近所のコンビニへととぼとぼ歩く。ふと見ると、手の平にのるようなちいさなたわしが道のまんなかに落ちている。無造作に近づいたら、風もないのにさわさわと転がるようにぼくから逃げた。いぶかしみつつ、こんどは驚かさないようじりじりと近づいてみた。ちいさなたわしは、そのままじっと様子を伺っている。さらに味をしめて、そうっと腕をのばし「チチチ…」と声をかける。たわしはまだ動かない。これなら捕獲できるかもしれない。さらに歩み寄ってみる。するとたわしは「みい」とちいさく鳴いて、ころころと向こうの車の陰へと転がっていき、あっという間に見えなくなった。今度はメガネを忘れずにかけてこよう。

2007/06/03

[300]   お子様ランチ宣言

at 21:32JST
「ご注文は?」
「…お子様ランチを」
「おこ…こちら大人の方にはご遠慮いただいております」
「いや、ぼくなんてまだ大人じゃ…。
 ひとの気持ちがわからないし。生きる意味も…。
 だからお子様ランチを食べたいんだ」
「身勝手な!
 ほかの方も、食べたいのに我慢しているんですよ」
周りの人が眉をひそめて見ている。
「いつも他人に迷惑をかけてばかり…。
 ぼくにお子様ランチ以外を食べる資格なんてないんですよ」
「資格!? 他人を不安にさせる発言は慎んでください!」
「じゃあ、いったい何を食べればいいんですか…」
店員は激辛スパイシーカレーを運んできた。辛くて辛くて、ぼくはただわんわん泣きながら食べた。

2007/05/29

[300]   夜道

at 00:28JST
人ごみを離れ夜道をひとり歩くと、今でも黒い犬がひたひたと忍び寄る。喧噪と静寂の落差が心に付け入る隙をつくるのだ。犬は低くうなる。「おまえはそれでいいのか」「生きていていいのか」と。ぼくはただ目をそむけ、夜空に漂う月に救いを求める。月はうろたえるだけ。そしてぼくは「生きていくしかないのだ」と嘆息する。

2007/05/21

[300]   いまどきの狩り

at 09:39JST
ヒトの寝静まった深夜。外で耳慣れない大型車の音がした。いま時分に…。息を殺し、そうっとカーテンをめくる。のそのそ走るタンクローリーと、数人の作業着の男が見える。側溝のふたを開けてはタンクから伸びたホースを突っ込み、何かしている。下水道のネズミ駆除か…。一隊はゆっくりと過ぎてゆく。すると、遅れぎみの後尾の男が側溝に何か見つけたのか。サッと四つん這いになり、見事なはやさでその何かを捕まえた。男は、手のなかでじたばたするそれを先行く隊列としばし見比べてから、「ぱくり」と頬張った。やがてごくりと音を立てて飲み込むとバツが悪そうに辺りを見やり、にいやおぅの鳴き声を残しあわてて仲間のあとを追って行った。
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