2007/04/23

[木鐸]   ぼくはタバコは大嫌いだけど、これは眉唾だ…

at 20:08JST
 
ぼくは他人がプカプカふかしている場に数分いただけでも扁桃腺が腫れたり熱が出たりするので、タバコは大嫌いだ。しかし、こういう根拠の怪しい論説がひとり歩きするのはもっとイヤだ。

NHKニュース: ADHD児の母親 喫煙率高い
http://www.nhk.or.jp/news/2007/04/23/d20070422000002.html
6歳から16歳までのADHDの子ども167人の親にアンケートをしたところ、喫煙率は、父親が70.1%、母親が46.7%で、一般の親の喫煙率と比べると父親は1.1倍でしたが、母親は2.7倍に高くなっていました。妊娠中に喫煙していたという母親も34.7%に上ったということです


おおかたコレを鵜呑みにして、今後ADHDの疑いのある児童に触れるたびに
「ああ、あれは母親が悪いのよ」
と陰口を叩く風潮を広める人間が増えるのだろう。「三歳児神話」(三歳までは母親がつかずはなれず育てないと子どもはダメになるという科学的根拠のまったくない珍説)と同じだ。実際にタバコを吸っていようが吸っていまいが、問題行動を起こす子どもを見かけたら「母親が悪い」と言うことができる。そういうふざけた論拠のひとつにしかならない。子宮頸ガンの女性をつかまえて、
「あんた、尻軽だからバチがあたったのよ」
と言うようなもんだ(←意味がわからない人はここらへんは自分で調べよう)。早い話が差別や偏見を助長する。

これは厳密な調査になっていない。

母数が167件というのも少なすぎるが、下はまったく社会生活に支障がないレベルから上はうつ症状を併発するレベルなど症状も程度も多種多様なADHDを一括して扱っており、なおかつ対象が6歳から高校に入る16歳までとまったく同一視できない範囲をいっしょくたにしてしまっている。そもそもADHDは血液検査やCTスキャンで
「あなたはADHD!」
と診断できるものではないので、ADHDとして扱われている中には“擬ADHD”な人も含まれる。これで喫煙習慣との因果関係を立証するのは無茶すぎる。

そもそも調査対象の家庭状況を統一して調べなければ科学的に因果関係をたしかめることはできない。年収や生活地域によっても喫煙習慣の普及度には差が出てくる。調査した医師は大阪・寝屋川市の人だが、これが金沢の山奥だったら(極論だが)喫煙習慣との関係性が確認できない可能性もある。

平成13年現在で産婦が多い20代女性の喫煙率はすでに1/4だった。これと19年現在の調査で「46.7%が喫煙者だった」という母親群の喫煙率とにほんとうに有意な差があるのかという点にも疑問がある。就職経験のある女性は職場での男性の喫煙などに影響されて一般に喫煙率が高くなるものだが、こうしたキャリアをもつ女性はADHDなどの情報に敏感な(リテラシーが高い)傾向がある。それだけ子どものADHD発見率が高くなるわけだが、これを逆方向から見れば当然「ADHD児の母親の喫煙率は高い」というとんちんかんな推測ができてしまう。

さらに、ADHDに対して
「なんだか最近そういうの増えてるよねー。
 女性の喫煙率が上がってるからじゃない?」
と勘違いしている人もいそうだが、
「ADHDが増えているという統計はない」
のだ。ADHDという概念自体が最近つくられたものなのだから。昔どれくらいいたのか、増えているか減っているか、そんなことはまったくわからない。ただ、そこにあてはめることで社会とうまくやっていく方法を検討しなおし幸せになれる人がいるので、便宜上そういう診断をしているに過ぎない。そういう人々は昔からいたのだ。おそらく増えても減ってもいない。

もちろん、妊娠中には飲酒・喫煙を控えたほうがいいとぼくも思う。そもそもつわりによくないのでタバコは吸えなくなるだろうし。しかし、これをもってして
「あら、問題行動児童よ。
 母親のせいよ」
と世間がうるさくなる可能性が思いっきり高いのはがまんならない。もっと慎重に調査・報道すべきだ。

そもそもこういった報道に触れてADHDがなんだかわかる人間って、どれくらいいるのだろうか。おおかた
「自分とはちがう、異常な人間。きもちわるい」
程度の浅い認識しかないだろう。ADHDって言ったって、スペクトラム的なもので症状には幅がある。本人にとって支障がなく社会とうまく折り合っていき、楽しく生きていけるのなら障害とは言えない。本当は、社会がもっと寛容ならADHD程度は単なる個性だ。実際、ADHDと気づかずに一生を終える人もいる。逆に、ADHDあるいはもっと致命的な障害を負っているにもかかわらず、
「いやーん、障害者ってキモーイ」
と他人を指さして笑っている人もいるだろう。それはあなたのことかもしれない。

日本では、人口1億2千万人のうち約1割がなんらかの障害を抱えているそうだ。100人いたら10人。10人いたら1人。



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